Water Vapor Energy Therapy
WAVE 治療(経尿道的水蒸気治療)
~前立腺肥大症の新治療~
2023 年 10 月、当院は前立腺肥大症の新しい治療法としてWAVE 治療(経尿道的水蒸気治療)を開始しました。 WAVE 治療は、低侵襲で効果的に症状を改善できる手術法です。手術時間が短く、治療効果が長期間持続することが特徴で、患者さんへの負担を軽減しながら生活の質の向上を目指します。お気軽にご相談ください。
WAVE 治療(Water Vapor Energy Therapy:経尿道的水蒸気治療)は、前立腺肥大症(BPH)を治療する新しい低侵襲手術療法です。
この治療法では、Rezūm システム(写真)を用いて内視鏡を尿道から挿入し(経尿道的)、水蒸気の力で肥大した前立腺組織を治療します。水蒸気は肥大した前立腺組織内に広がり、細胞を破壊します。破壊された細胞は体内で自然に吸収され、その結果、前立腺肥大症による排尿障害などの症状が緩和されます。
日本では行政の承認を 2021 年 10 月 13 日付けで取得しましたが、欧米では 5 年以上の実績があり、治療が安全に進められること、また治療の効果があることが示されています。
ただし、この治療法は、尿道括約筋インプラントをご使用の方、陰茎プロテーゼの治療歴がある方、尿路感染が起きている最中の方、治療時に視野を妨げるほどの著名な血尿が見られる方には、適用できません。
針で数か所刺すだけなので傷がほとんどありません。低侵襲であることから、合併症のリスクが高い患者さんや高齢、認知機能障害など、術後の身体機能低下リスクが高い患者さんにも適応可能です。また、抗血栓薬を内服していても受けられます。
前立腺の肥大組織の形状や位置にもよりますが、大体10分程度です。なお、麻酔を含めた時間は、麻酔の種類により異なります。局所麻酔、腰椎麻酔、全身麻酔いずれでも実績はありますが、患者さんに適した麻酔方法を担当医が考慮します。
米国で実施された臨床試験では、前立腺肥大症の状況を判断するIPSS(国際前立腺症状スコア:自覚症状の問診)やQOLスコアの5年間の有効性が報告されています。また、5年間の再手術率も4.4%と低い数値が報告されています。
前立腺内に送り込まれる水蒸気は103℃ですが、体温で冷やされ水に戻ります。このときに発せられる熱エネルギーが肥大組織に影響し、細胞を壊します。壊死した細胞が1~3か月をかけて自然に体内に吸収されることで、前立腺肥大症の症状を和らげます。
①麻酔
手術を始める前に麻酔を投与します。
②治療箇所の特定(図A)
まずはじめに、WAVE治療専用機器を用いて、水蒸気を注入する治療箇所を特定します。
③水蒸気の注入(図B)
治療箇所を特定したら水蒸気を注入します。患者さんの前立腺の状態によって、水蒸気を注入する箇所や回数は異なります。
④カテーテル留置
水蒸気を注入し終えたら尿道カテーテルを留置し手術は終了です。
⑤手術後(図C)
組織の自然吸収は、患者さんによって異なりますが術後数週間から1か月後から始まります。
※尿道カテーテルの留置について
WAVE 治療は、水蒸気の熱エネルギーを使用するため、前立腺組織の温度が上がり、浮腫(腫れ)を起こします。尿道に浮腫がある間に尿閉にならいよう一定期間、尿道カテーテルを留置します。留置期間は患者さまの症状や前立腺の状態によって異なります。