がん患者さんの「痛み」を緩和することで、
治療に対する気持ちを前向きにしたい。
がん性疼痛看護認定看護師
訪問看護室
私は、がん性疼痛看護認定看護師の資格を取得しています。日本でもこの資格を取得している看護師は、少ない方だと思います。
当院には当時、婦人科のがん患者さんが多く、がん患者さんを支えるために何ができるかと考え、疼痛ケアを選択しました。痛みって、人にとって一番つらい感覚だと思うのです。自分も痛みは嫌いですから、痛みを和らげる看護ができる資格を取りたいと考え、緩和ケアを行っているクリニックに転職し、1年働いてから認定資格を取得するための学校に行きました。つまり、始まりは当院の婦人科だったのです。
資格を取得してからは、「痛みの評価を早くしてあげる」ことが私の仕事となりました。医師に「痛みのお薬が効かない、変えた方が良いのでは」などを提案することができるようになりましたし、それで痛みがすっと無くなった時に「夜、眠れるようになった」とおっしゃる患者さんがいれば、本当に良かったなと思えます。患者さんのそばにいて、痛いところをさすって話を聞くだけで「ラクになった」といわれることもあります。「その人にとっての苦しみって何だろうか?」と考えながら接する視点が、各段に増えたと思います。
人は痛みがあると「もういいや」となるけれど、もしも痛みが緩和できれば、患者さんは次のステップに意識を向けられます。意識は、一方通行だと私は思います。痛みがあれば、そっちにばかり意識がいって他が見えなくなりますが、その意識を違う方に向けられるなら、治療に向けて一歩進むことができるのです。
私は前職のとき、ディグニティセラピーを実践していました。これは「大切な人に手紙を書きましょう」というもので、患者さんがメッセージを伝えたい人に残せるように、ボイスレコーダー使って質問しながら語っていただいた内容を、手紙におとして患者さんに渡し、患者さんも人生を振り返ることができるという取組みです。がん患者さんの最期が近づいたとき、自分の人生を振り返ることで、人生楽しかったな、もう少し頑張ろうかなと前向きになれるように支援していくのです。そしてこの手紙は、患者さんが亡くなったときにご家族や大事な人に届けます。患者さんが生きていた証として、大事な誰かに引き継いでいくのです。
このディグニティセラピーを、この地域の一般病院で行っているところはありません。当院でも今はまだ準備中ですが、いずれはこの地域のがん患者さんを支える取組みとして、実践していきたいです。